令和元年度戦略的基盤技術高度化・連携事業(ユニコーン創出に資する中小企業・スタートアップの海外展開及び資本政策のあり方に関する調査事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、ユニコーン企業創出のための中小企業・スタートアップの海外展開及び資本政策について書かれた報告書である。
我が国では米国と比較して、スタートアップの調達額・評価額の伸びが弱く、10億ドル規模のユニコーン企業が生まれていない現状がある。この背景として、事業展開、人的体制、資金調達環境のいずれにも課題が存在し、大規模ベンチャー企業が量産される好循環の市場構造に至っていないことが挙げられる。
海外展開支援については、韓国やフランスの事例分析により、有力企業への集中的支援と一般企業への幅広い支援を濃淡をつけて実施することの重要性が示されている。韓国では年間10億円規模の予算で海外拠点を運営し、フランスではオンラインプラットフォームを活用したコミュニティ形成を推進している。
一方、我が国の現行支援策は戦力分散による「広く薄い」支援となっており、有力スタートアップの期待を満たす踏み込んだ支援には至っていない。対策として、J-Startup内でグローバル展開の有力企業数十社を絞り込み、VC・PEへの政策的LP出資を通じた戦略立案から実行支援までのハンズオン支援の実行が提案されている。
資金調達環境においては、アーリーステージのスタートアップに対する融資が特に不足していることが判明した。政策系金融機関がシード融資を、民間金融機関がミドル以降をカバーする一方で、アーリーステージの融資が欠落している。この課題に対し、債務保証の強化、業界団体「VD協会」の発足によるノウハウ横展開、政策金融の利用促進等の施策が検討されている。
