令和元年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(熱量バンド制への移行に向けた検討に関する調査)

掲載日: 2020年8月25日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁電力・ガス事業部ガス市場整備室
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報告書概要

この報告は、日本の都市ガス供給制度における標準熱量制から熱量バンド制への移行の検討に関する調査報告書である。現在の標準熱量制では一定の熱量のガスを供給するため、LNGにLPGを添加する熱量調整が必要であり、これがガス小売事業への参入障壁となっている。一方、欧州や韓国では一定の範囲内での熱量変動を許容する熱量バンド制が導入されており、我が国でも同制度への移行により新規参入促進や調達コスト削減等のメリットが期待されている。

調査では欧州各国および韓国における熱量バンド制の実態を現地インタビューにより調査した。欧州では歴史的に多様なガスソースからの供給により熱量バンド制が発達し、各国で異なる受入品質基準を設定している。需要家への影響については、産業用機器では一部調整が必要だが、家庭用機器への影響は限定的である。韓国では2017年から熱量バンド制を導入し、ガス設備への影響調査と費用補償制度を整備している。

また、東京ガス供給区域における40MJから46MJの熱量変動シミュレーションを実施し、LNG基地での熱量変動が導管網に与える影響を分析した。熱量バンド制導入によるメリットとして、LPG添加コストの削減、LNG調達多角化による供給安定性向上、導管相互接続の促進、ガス機器の国際競争力強化、将来的なバイオガス・水素注入への対応が挙げられる。一方、デメリットとしては機器対策コスト、オンサイト熱調設備設置費用、人件費、LNG増量コスト、減熱設備費用、熱量計設置費用等が発生する。

最終的なメリット・デメリット比較では、熱量バンド制導入により長期的には経済効果が期待されるものの、初期投資として相当な費用が必要となることが明らかとなった。