令和元年度内外一体の経済成長戦略構築に係る国際経済調査事業(我が国のPHRの利活用・事業創出の推進に向けた調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、我が国のPHR(Personal Health Record)の利活用と事業創出の推進について書かれた報告書である。政府の経済財政運営方針において健康寿命延伸が重要課題とされ、個人の健康状態や服薬履歴等を本人や家族が把握し日常生活改善や健康増進につなげるPHRの推進必要性が指摘されている背景を受けて実施された調査である。
本調査では、国内外の官民の取組を調査することでPHRの利活用・事業創出推進に関する提案を目的としており、業界団体への事前ヒアリング、国内調査、海外調査の三段階で実施された。国内調査では六社のPHR事業者にヒアリングを行い、収集保有情報、ビジネスモデル、データ連携方法等を調査した結果、発症後の自己管理向けと予防・未病向けの健康増進に大別され、法人向けビジネスが収益源の主体となっていることが判明した。
海外調査では、デンマーク、イギリス、オランダ、オーストラリア等の先進事例を調査し、医療情報の電子化推進や相互運用性確保の取組、認証制度等が整備されていることが明らかとなった。特に海外では医療機関に保存された医療記録へのアクセスを提供する事業者が目立つ傾向があり、電子カルテ普及率の高さや患者アクセス権の法的義務化が背景にあると分析された。
調査結果の総括では、先進的事業創出、事業者間相互運用性確保、同意・本人認証・セキュリティ、保存期間の四つの論点について検討が行われた。今後の方向性として、実証事業の事業化推進、健康医療情報の電子化推進、標準化に向けた民間団体による活動推進、認証制度整備による利活用促進等が提言されている。
