令和元年度質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費~ジョージア国アナクリアSEZ開発調査事業~ファイナルレポート

掲載日: 2020年8月27日
委託元: 経済産業省
担当課室: 通商政策局ロシア・中央アジア・コーカサス室
タグ: 海外展開
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報告書概要

この報告は、ジョージア国のアナクリア経済特別区(SEZ)開発に関する事業実施可能性調査について書かれた報告書である。ジョージア西部の黒海沿岸アナクリアにおいて、同国初の深海コンテナ港と連動したSEZ開発事業への日本企業の参画可能性を検討したものである。

アナクリア港は水深16メートルで最大10,000TEUの船舶が寄港可能な最先端インフラを備え、開発総事業費25億ドル、9つのフェーズで計画されている。この港湾開発により、バクー・トビリシ・カルス鉄道をはじめとする既存交通ネットワークと接続され、黒海とカスピ海を結ぶ南コーカサス地域の輸送回廊が実現する。これにより、中国東部から欧州への海上ルートのリードタイムが30-35日から14日以内に短縮され、スエズ・イラン経由やシベリア横断鉄道に次ぐ第三の代替ルートとなることが期待される。

調査の背景として、既存マスタープランが事業性に乏しいため、日本人が経営責任者を務めるプノンペン経済特区社に改定要請があり、その主要株主であるゼファー社を親会社とするトモニアス社が事業参画可能性を検討することとなった。SEZ開発は通常5-10年を要するため、現時点での参画機会を逃すと中国・シンガポール・韓国が先行進出し、事業機会を逸する懸念がある。

調査内容は、ジョージアの政治・経済・投資環境の分析、産業誘致ポテンシャルの評価、既存マスタープランの課題抽出と改定案の作成である。改定マスタープランでは、SEZ周辺の計画インフラとの接続性を考慮したアクセス道路とゲート配置、想定入居企業の標準規模に基づくロット割、港湾隣接立地を活かした需要予測を行った。

結論として、アナクリアSEZ開発はジョージアの経済発展に大きく寄与し、周辺インフラ整備により多様な企業が利用する産業基盤となる可能性を示している。ただし、政治的リスクや不十分なインフラ整備などの課題があり、公的機関によるリスク軽減や輸出信用機関によるポリティカルリスク保険の活用、国際機関による法制度整備支援が必要である。