令和元年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費(米国カリフォルニア州におけるDPR/IPR事業の事業化・汎用的事業モデルの検討及びマスタープランへの組み込み)調査報告書(日本語版)
報告書概要
この報告は、米国カリフォルニア州におけるDPR(直接飲用利用)およびIPR(間接飲用利用)事業の事業化可能性について調査した報告書である。調査対象はラス・ヴァージェネス水道局とオレンジ郡水道局であり、横河電機とみずほ情報総研が経済産業省の委託により実施した。
カリフォルニア州では水不足解決策として、下水処理水を高度処理して飲用水に再利用するIPR/DPR事業が注目されている。IPRは処理水を一旦地下水や貯水池に貯留してから飲用利用する方式であり、DPRは直接飲用水系統に供給する方式である。州政府は2030年までに新規IPR/DPR施設で日量660万立方メートルの処理能力確保を目標としている。
技術面では、膜分離活性汚泥法、逆浸透膜、紫外線消毒などの既存技術に加え、横河電機のDDMO(データ駆動型最適化モデル)とRAPID(微生物迅速測定手法)を組み込んだ統合システムを提案している。DDMOは活性汚泥処理の最適化により省エネ効果を実現し、RAPIDは病原微生物の迅速検出により安全性を向上させる。
事業化に向けた課題として、新技術の規制適合、現地企業との連携、資金調達手段の確保が挙げられている。特に技術実証段階では、州水道整備基金やWIFIA等の公的資金制度活用が重要である。また、EPC事業者や膜メーカーとの戦略的提携により市場参入を図る必要がある。
環境効果として、LVMWD施設でのDDMO導入により年間30トンのCO2排出削減効果が見込まれ、カリフォルニア州全体では2030年までに最大3万4千トンの削減が期待される。事業推進には短期的にはDDMO技術の実証、中期的にはRAPID技術の商用化、長期的には統合システムの本格展開という段階的アプローチが提案されている。