令和元年度産業技術調査事業(研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速に向けた調査)最終報告書
報告書概要
この報告は、研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速に向けた契約に関する問題について書かれた報告書である。経済産業省が実施した令和元年度産業技術調査事業の成果として、両者の連携における契約書作成のノウハウ不足という課題に焦点を当てている。
報告書は、AI、機器・ロボティクス、素材、バイオ・創薬の4分野のベンチャー企業13社と事業会社7社に対するヒアリング調査を基に作成されている。連携プロセスを「協議」「価値の検証(PoC)」「研究・開発」の3つのフェーズに分類し、それぞれで締結される秘密保持契約(NDA)、PoC契約、共同研究開発契約について詳細に分析している。
調査結果では、契約交渉における主要な問題として、適切な契約スキームの理解不足、契約書雛形の不備、重要ポイントの把握不足、知的財産権の帰属に関する合意困難、専門家への相談体制不足が挙げられている。特に事業会社側の下請け企業向け契約書をそのまま適用する傾向や、ベンチャー企業側の契約・経営知見不足が大きな障害となっている。
対応策として、ベンチャー企業には技術力だけでなく契約や経営に関する知見の習得、事業会社には連携目的の明確化と対等な関係での契約締結が提言されている。各契約類型別には、NDAでは秘密情報の定義と開示範囲の明確化、PoC契約では検証基準とマイルストーンの設定、共同研究開発契約では成果帰属と競業禁止範囲の適切な取り決めが重要な留意点として示されている。報告書は、これらの知見を広く共有することで日本のオープンイノベーション活性化に寄与することを目指している。