令和元年度産業技術調査事業(産学間の人材流動化を促進するためのクロスアポイントメント制度活用促進に向けた調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省が実施したクロスアポイントメント制度の活用促進に関する調査について書かれた報告書である。クロスアポイントメント制度は、労働者が複数の機関に同時に雇用され、それぞれの機関において役割に応じた従事比率で就労することを可能にする制度である。統合イノベーション戦略2019において人材流動性の向上と若手の活躍機会創出のためにこの制度の積極的活用が推奨されている。現状では大学間や大学と国立研究機関間での活用は進んでいるが、特に大学から企業へのクロスアポイントメント事例は限定的であることが課題として指摘されている。本調査では2014年に策定された基本的枠組みの追補版として、大学と企業間におけるクロスアポイントメントの活用方法と、法・契約に関する事務手続きの明確化を目的としている。調査では有識者による検討委員会を4回開催し、労務管理、知的財産権、利益相反に関する留意事項について詳細に議論された。労務契約については在籍型出向による給与支払い、労働時間管理、社会保険の扱いなどが検討され、知的財産権については研究成果の帰属や組織間協定の取決め方法が議論された。また海外の複数機関雇用契約の実態について米国、英国、ドイツ、フランス、ベルギー、中国の事例調査が実施された。最終的に大学と企業の双方にとってメリットのあるWin-Win-Winの関係構築の重要性が強調され、制度活用のための具体的な手続きフローと協定書例が提示されている。
