令和元年度中小企業実態調査事業(中小企業の基準や成長等に関する調査研究)報告書
報告書概要
この報告は、令和元年度中小企業実態調査事業における中小企業の基準や成長等に関する調査研究について書かれた報告書である。
平成11年の中小企業基本法改正から20年が経過し、少子高齢化、IT技術革新、グローバル化等により中小企業を取り巻く環境が大きく変化している中で、現行の中小企業基準の適切性と企業成長への影響を分析することを目的として実施された。調査は中小企業等の実態に関するデータ分析、企業へのアンケート調査、有識者による検討会の三つの手法により行われた。
データ分析では、現行の中小企業基準の閾値の適切性について、自己資本比率とインタレストカバレッジレシオを用いて業種ごとに分析した結果、製造業では従業員301人から350人、小売業では201人から250人が中央値における第1のピークとなっており、業種によって最適な閾値が異なることが判明した。また、中小企業基準が成長の阻害要因となっているかについては、一定数の企業が中小企業の枠組みに留まるために資本金の減資を行っていることが確認され、特に資本金は従業員数と比較してコントロールしやすいため調整手段として利用されている実態が明らかとなった。
アンケート調査では、企業の規模拡大時における中小企業基準への対応行動を調査し、資本金の減資や増資見送り、従業員の削減や増員見送りなどの具体的な対応策について分析を行った。検討会では一橋大学の沼上幹教授を座長とする学識経験者により、調査結果の検証と今後の中小企業政策の方向性について議論が行われた。
