平成31年度化学物質安全対策「レスポンシブル・ケアの更なる促進に関する調査研究(事業者の行う化学物質管理レスポンシブル・ケアの調査、分析、促進)」調査報告書

掲載日: 2020年10月23日
委託元: 経済産業省
担当課室: 製造産業局化学物質管理課化学物質リスク評価室
委託事業者: 成蹊大学
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平成31年度化学物質安全対策「レスポンシブル・ケアの更なる促進に関する調査研究(事業者の行う化学物質管理レスポンシブル・ケアの調査、分析、促進)」調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、化学物質を使用する業界におけるレスポンシブル・ケアの促進に関する調査研究について書かれた報告書である。平成31年度に成蹊大学が実施した調査では、塗装業界と印刷業界を対象として、サプライチェーン全体における化学物質管理の現状を詳細に分析している。調査の目的は、複数の業界を選択して業界団体や個別事業者の化学物質管理に関わるレスポンシブル・ケアの実態を把握し、現時点での課題を抽出して今後の方向性を提示することである。

調査方法として、業界団体に対するヒアリングとアンケート調査、個別事業者の現地調査を実施し、大企業から中小企業まで様々な規模の事業者を対象とした。特に揮発性有機化合物(VOC)に焦点を当て、平成29年度における我が国のVOC排出量約65.4万トンのうち、塗料使用が38%、印刷インキが5%を占める状況を踏まえて両業界を選定している。

塗装業界では、日本塗料工業会を中心とした調査を行い、コーティング・ケア活動、VOC排出抑制ガイドライン、低VOC塗料の自主表示、非トルエン・キシレン塗料の自主表示、GHSによるラベル表示とSDS作成などの取り組みを確認した。一方、印刷業界では、日本印刷産業連合会および関連団体の活動を調査し、印刷サービス・グリーン基準認定制度やNL(ノンランキング)インキの普及促進などの取り組みを把握している。

調査結果の分析から、印刷業界は塗装業界と比較してVOC削減がより進んでいることが判明した。その主要因として、業界のサプライチェーンにおける認証制度とそれを支える情報伝達の仕組みが比較的整備されていることが挙げられている。また、両業界の対比から、VOC排出削減を進めるためにはサプライチェーン全体の取り組みと、各段階の事業者間における情報伝達が重要であるとの認識に至った。

これらの知見に基づき、新たな化学物質管理の仕組みとして環境リスクラベリングシステムを提案している。このシステムは、含有量ではなく製品製造時に環境中に放出された化学物質の量に基づき、ヘルスインデックスによる重み付けを行って定量的に評価するものである。サプライチェーンの各段階でラベリングを実施することで、事業者や消費者が環境リスクに基づく製品選択を可能にし、全体的な環境リスクの低減を図ることを目指している。