平成31年度化学物質安全対策(リスクベースの視点から見たレスポンシブル・ケアのあり方)調査報告書

掲載日: 2020年10月23日
委託元: 経済産業省
担当課室: 製造産業局化学物質管理課化学物質リスク評価室
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報告書概要

この報告は、化学物質の安全対策におけるリスクベースの視点から見たレスポンシブル・ケアのあり方について書かれた報告書である。世界共通尺度を志向した化学物質管理の枠組み構築を目的として、化学物質地図の作成、PRTR対象物質の排出量変化傾向の要因分析、非平常時の曝露・回復過程を対象としたプロトタイプモデルの構築という三つの課題に取り組んだ。

化学物質地図の作成では、化審法対象物質1027物質を対象として、構造情報を用いた多変量解析と機械学習機能を活用した分類を実施した。68種類の構造データを収集し、主成分分析とクラスター分析を行い、化学物質の類型化を進めた。USEtoxを用いてライフサイクル全体でのリスクを定量化し、化審法規制分類との比較検討を行った結果、リスクの十分に低い優先評価化学物質の特定が可能となった。

PRTR対象物質の排出量変化傾向の要因分析においては、産業連関分析とPRTRデータの連成解析を基礎として構造分解分析を実施した。2001年から2015年までの期間を対象として、排出量変動要因を人口、需要構造、生産構造、排出抑制技術の普及といった観点から解明した。特にジクロロメタンを対象とした詳細解析では、排出係数の改善による寄与が確認された。

非平常時の曝露および回復過程を対象としたプロトタイプモデルの構築では、化学物質流出事故に対する回復期の対応を支援するツールとして、PRTR物質を対象とした物性値データベースを開発した。このデータベースは、流出事故後の環境媒体中での挙動特性を把握するための情報提供を目的として、物性値データを体系的に整理したものである。アクリロニトリルの流出事故をケーススタディとして実施し、市街地、農地、水域における分配特性と挙動傾向を明らかにした。

研究の成果として、化学物質のリスク評価における分類手法の有効性が示され、産業連関分析による排出量変化要因の定量的把握が可能となった。また、非定常な化学物質流出に対する回復期対応のための物性値データベースが構築され、高濃度汚染点の出現可能性を把握するための情報基盤が整備された。これらの成果は、持続可能な社会に向けた化学産業のあり方についてリスク科学の分野からの助言を構築する基盤となることが期待される。