令和元年度産業技術調査事業(大学発ベンチャー実態等調査)報告書
報告書概要
この報告は、令和元年度における日本の大学発ベンチャー企業の実態と成長要因について分析した報告書である。
調査では全国の大学・高等専門学校等を対象とし、2019年度時点で2,566件の大学発ベンチャー企業を確認した。これは前年度比288件増加で、5年連続の増加傾向を示している。近年の成長率は特に顕著であり、2018年度は対前年度比約9%、2019年度は12.6%の大幅な増加となった。
海外との比較では、アメリカが年間約1,000件の新規設立に対し、日本は約128件と大きな差がある。業種別では情報通信業とバイオ・ヘルスケア関連が多く、タイプ別では技術移転型よりも研究成果活用型・共同研究型が多い傾向にある。
実態調査の結果、大学発ベンチャーの成長には段階的な特徴がある。前期ステージでは、CEO・CTOの産業界経験、技術顧問の存在、エンジェル投資家からの出資、大企業とのアライアンス、ウェブマーケティングによる販路開拓が重要である。後期ステージでは、CEO・CTOの経営専門化、ベンチャーキャピタルからの出資、研究開発補助金の活用、展示会・学会での販路拡大が成長要因となる。
人材面では経営層の産業界経験が成長に大きく影響し、資金調達では段階に応じた適切な資金源の選択が重要である。また大学からの支援として、TLOによる技術移転支援や産学連携コーディネーターの活用が効果的であることが明らかになった。これらの知見は今後の大学発ベンチャー支援策検討の基礎資料として活用される。
