令和元年度産業保安等技術基準策定研究開発等(休廃止鉱山におけるグリーン・レメディエーション(元山回帰)の調査研究事業)
報告書概要
この報告は、休廃止鉱山におけるグリーン・レメディエーション(元山回帰)の調査研究事業に関する報告書である。事業の背景には、金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づく第5次基本方針を踏まえ、産学官連携で鉱害防止対策技術の基礎研究や技術開発に取り組む必要があることがある。従来の鉱害対策では個別の問題解決が優先され、継続する坑廃水処理の低コスト化や省力化の視点が不足していた。学術研究によると今後の坑廃水処理は100~150年間を要すると予測されることから、長期的視点に立った処理施設の更新や人材育成等の能動的な対策技術検討が重要である。
本事業では、リスク評価・管理アプローチにより重金属等の環境影響を合理的に低減しつつ、環境負荷を低減する環境調和型対策としてグリーン・レメディエーションを検討した。具体的には、マンガン酸化菌利用処理技術調査研究、生態影響評価に係る調査・分析、植物-微生物複合共生系を利用した新たな緑化対策技術調査、利水点等管理・コミュニケーションの検討、休廃止鉱山管理等の高度化の検討を実施した。
マンガン酸化菌利用処理技術では、1鉱山で菌叢解析と水質分析を季節変動の確認のため3回実施し、人工湿地の表面流方式と接触酸化プロセスの技術成熟度レベル評価を行った。生態影響評価では、坑廃水処理水の河川流入による生態影響把握のための調査手法や分析・評価方法を検討し、海外のガイダンスを参考にしたガイダンス案を作成した。緑化対策技術では3鉱山の事例を収集し、利水点等管理では2鉱山でヒアリングを実施してガイダンスの考え方を整理した。事業全体を通して有識者による委員会とワーキンググループを設置し、専門的指導を受けながら効果的・効率的に業務を進めた。
