令和元年度原子力の利用状況等に係る調査(国内外の廃止措置の規制に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、国内外の廃止措置の規制に関する調査について書かれた報告書である。
令和元年度に資源エネルギー庁の委託により実施された本調査は、原子力発電所の廃炉に関する海外諸国の安全規制のあり方を調査し、今後の日本の原子力政策立案に役立てることを目的としている。現在、日本では商用炉24基が廃炉を決定しており、世界でも180基以上が閉鎖されているが、廃炉を完了したケースは限られているため、安全かつ円滑な廃炉の実現は世界共通の課題となっている。
調査対象は米国、英国、ドイツの3カ国であり、各国の廃止措置に関する安全規制の現状、グレーデッドアプローチを含む規制の考え方、規制策定・適用時のコミュニケーション方法、大型廃棄物の処理・処分方法などについて詳細な分析が行われた。米国では効率化を主眼とした規制制度の刷新が進められており、廃止措置プラントに適用される一律の規制が整備されている。英国では事業者に一義的責任を負わせつつ、リスクに応じたフレキシブルな規制活動を実施している。ドイツでは連邦法でグレーデッドアプローチの適用が要求され、廃止措置と建設・運転を切り離した評価が求められている。
各国とも廃止措置はリスク低減活動であるとの認識を共有し、段階的なリスク低減に合わせた規制を実施している。特に使用済燃料の取り出し後は大幅なリスク低減が認められ、それに応じた規制の合理化が図られている。規制策定時のコミュニケーションでは、ステークホルダーとの協議やパブリックコメントなどの手続きが重視されており、透明性の確保に努めている。大型廃棄物の処理・処分については、各国で異なる状況にあり、米国では解体せずに処分する場合が多く、英国では環境影響を考慮した最適な管理方針の選択、ドイツではクリアランス制度の活用が進んでいる。
