令和元年度中小企業実態調査事業(「経営者保証に関するガイドライン」活用状況調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、「経営者保証に関するガイドライン」の活用状況について書かれた報告書である。平成26年2月から運用開始されたこのガイドラインは、中小企業の経営者保証における合理的な保証契約の在り方を示すとともに、主債務の整理局面における保証債務の整理を公正かつ迅速に行うための準則として制定されたものである。
令和2年1月に全国の中小企業30,000社を対象として実施された調査では、経営者保証の解除意向を持つ経営者が7割を超えているものの、実際に解除申し出に至っていないケースが大半を占めていることが明らかとなった。また、円滑な事業承継のためには、新旧経営者からの経営者保証の二重徴求の解消も重要な課題となっている状況が判明した。
調査結果では、回答企業5,145社(回答率17.2%)のうち、業種別では卸売業・小売業が最も多く31.1%、製造業が23.7%、建設業が20.7%を占めている。従業員規模別では10-19人規模の企業が22.6%と最も多く、業歴20年以上の企業が79.9%を占めており、長期間事業を継続している中小企業が回答の中心となっている。
事業承継に関する意識調査では、後継者候補に事業承継の話をしていない理由として「事業承継は当分先のことと考えているため」が68.0%で最も多く、「経営者保証を理由に事業承継を拒否される懸念があるため」も15.4%存在している。適当と考える経営者保証のあり方については、「事業承継を契機に現経営者と後継者共に経営者保証を提供しない」が64.1%と最も多い回答となった。これらの結果は、ガイドラインの周知・普及および活用促進が途半ばの状況にあることを示しており、一層の活用に向けた課題整理の必要性を浮き彫りにしている。
