令和元年度産業経済研究委託費(経済産業政策・第四次産業革命関係調査事業(グローバル市場獲得と標準化活動等との関連性に関する調査))報告書
報告書概要
この報告は、グローバル市場獲得と標準化活動等との関連性について分析した調査報告書である。企業活動がグローバル化する現代において、自社のポジショニングを見直し、協調領域を特定して標準化活動を通じた海外展開の推進が重要になっている状況を背景として、経済産業省が実施した調査である。
調査では、経済産業省企業活動基本調査と海外事業活動基本調査の調査票情報を活用して個社単位の海外展開データセットを構築し、ISO及びIECへの日本からのエキスパート登録数から標準化活動データセットを作成した。これらのデータを統合して、海外展開の成否と標準化活動との関連性を定量的に分析している。
分析手法として、標準化エキスパート数と主要経営指標との相関分析、標準化エキスパート2名以上参画企業に着目した相関分析、構造方程式モデル分析を実施している。産業大分類別および産業中分類別に詳細な分析を行い、製造業、卸売業・小売業、学術研究・専門技術サービス業等の各業種における特徴を明らかにしている。
分析結果として、標準化エキスパート数と海外事業関係変数との間に明確な相関関係は見出せなかったものの、業種別には一定の関連性が認められた。製造業では研究開発や海外投資を通じた生産活動の活発化、化学工業では研究開発効果の向上と海外展開、生産用機械器具製造業では海外投資と研究開発を活用した積極的な海外展開などの傾向が確認されている。
関連性が成立しない背景として、標準化活動への注力度把握の限界、エキスパート以外の活動従事者の把握困難、標準化活動の効果発現までの時間軸の乖離、因果関係の希薄さなどが指摘されている。特に標準化活動の効果は多様であり、グローバル市場獲得への直接的な寄与は必ずしも大きくない可能性があることが示唆されている。
報告書は、標準化戦略の有無やビジネスモデルといった既存統計にない追加データの必要性を指摘し、標準化活動をグローバル市場獲得につなげるプロセスのより詳細なモデル化が求められるとしている。
