令和元年度産業経済研究委託事業(企業の長期成長に向けた資金調達環境の在り方に関する調査検討)調査報告書
報告書概要
この報告は、日本における企業の長期成長に向けた資金調達環境について書かれた報告書である。第四次産業革命や人口減少といった環境変化の中で、企業がイノベーションを通じて持続的に価値を創出するためには、企業と投資家の協創による長期的・戦略的な投資が必要であるとしている。しかし、日本の資本市場では機関投資家がパッシブ運用に偏っており、中長期的な投資家層が薄いことが指摘されている。
報告書では、2014年から2018年の大量保有報告書を分析した結果、資産運用業者が日本企業への投資において高い存在感を示していることが明らかになった。上位100社の56%を資産運用業者が占め、投資先企業数も全体の45.3%に達している。また、海外資産運用業者は日本国内の業者より平均保有割合が高く、保有日数も長い傾向にあることが判明した。
ベンチャー企業の資本政策における課題として、非上場段階では経営裁量と調達額のバランスがとれた調達手段の不足、新規上場時には望ましい株主構成の維持の困難さ、先行投資型企業の上場の難しさが挙げられている。上場後においても、長期資金供給者の持続的獲得や先行投資型企業における資本政策構築の困難さが問題となっている。これらの課題に対し、海外事例や先進的な対応策が紹介されており、複数主幹事制の活用や投資家との継続的な対話、業績予想制度の見直しなどが提案されている。
