令和元年度原子力の利用状況等に関する調査(国内外の原子力政策動向に関する調査)
報告書概要
この報告は、国内外の原子力政策動向について書かれた報告書である。本調査は、米国、英国、フランスを中心とした諸外国の原子力政策の動向を総合的に分析したものであり、電力自由化や再生可能エネルギー導入拡大が進む中での原子力事業の課題と対応策を詳細に検討している。
米国では連邦レベルでの原子力支援策とともに、イリノイ州やニューヨーク州など複数の州において、ゼロエミッション証書(ZEC)制度による原子力発電所への経済的支援が実施されている。これらの州レベルの支援制度は、脱炭素化目標達成において原子力の役割を重視する政策の現れである。英国では、新設原子力発電所に対するRAB(Regulated Asset Base)モデルの導入検討が進められており、建設リスクの分散を通じた投資環境の改善が図られている。また容量市場制度により既設原子力発電所の収益安定化も支援されている。
フランスにおいては、原子力依存度低減を目指すエネルギー転換法の下で、2035年までに原子力発電比率を50%まで削減する目標が設定されているものの、脱炭素化との両立が重要な課題となっている。国際機関による分析では、脱炭素化目標達成において原子力と再生可能エネルギーの最適な組み合わせが議論されており、システム全体のコスト最小化の観点から原子力の意義が再認識されている。特にMITやIEA、NEAによる研究では、高い再生可能エネルギー導入率下でのシステム統合コストの増大や、原子力による系統安定化効果の重要性が指摘されている。
各国の世論調査結果は、原子力に対する国民の意識が国によって大きく異なることを示している。米国では原子力支持が継続的に増加傾向にある一方、日本では東京電力福島第一原子力発電所事故以降、否定的なイメージが根強く残っている。原子力事業においては、近年の新設プロジェクトでコストオーバーランや工期遅延が相次いでおり、その要因分析と対策検討が急務となっている。
