令和元年度産業経済研究委託事業(経済産業政策・第四次産業革命関係調査事業費(我が国産業・企業の競争力を踏まえた今後の経済産業政策の方向性に関する分析調査))報告書

掲載日: 2021年2月18日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局産業構造課
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令和元年度産業経済研究委託事業(経済産業政策・第四次産業革命関係調査事業費(我が国産業・企業の競争力を踏まえた今後の経済産業政策の方向性に関する分析調査))報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、第四次産業革命における日本企業の競争力向上について、マークアップ率を中心とした分析手法により検討を行った報告書である。第四次産業革命のデジタル技術とデータ活用は汎用技術として全産業に幅広い影響を与えており、企業が付加価値の高い製品・サービスを生み出すための差別化戦略が重要となっている。マークアップ率は財やサービスの価格を限界費用で割った比率として定義される経済指標であり、企業の利潤創出能力と競争優位性を示す重要な指標として位置づけられる。

本調査では、マークアップ率に関する先行研究を整理し、企業の利潤と生産性の関係、近年の世界的なマークアップ率上昇とスーパースター企業の登場、推定手法の技術的課題という三つの論点から分析を進めている。海外研究では生産性の高いスーパースター企業がマークアップ率上昇を牽引していることが指摘されており、固定費用・埋没費用の上昇、ネットワーク効果、買い手独占力の上昇、レントシーキング、グローバル化の進行などが要因として挙げられている。

分析手法としては、De Loecker and Warzynski による生産関数に基づくアプローチを採用し、企業の費用最小化問題から導出される生産関数の弾力性を用いてマークアップ率を算出している。コブ・ダグラス型生産関数とOlley-Pakes手法を組み合わせることで、生産要素と生産性の相関を適切に考慮した推定を実現している。分析対象データとしては、BvD社の日米欧上場企業データと帝国データバンクの企業単独財務データを使用し、国際比較と国内詳細分析の両面から検討を行っている。

マークアップ率向上の要因分析では、積極的な競争戦略、リスク許容度、意思決定のスピード、分析部門の権限の強さ、内部資本市場の効率性という五つの観点から企業の組織的特性との関連を探っている。これらの要因は企業の競争力向上と密接に関連しており、今後のより詳細な分析により日本企業の付加価値創出能力の源泉を明らかにすることが期待される。本調査は日本における産業・企業規模ごとの利益状況を国際比較の視点から分析することで、付加価値向上を実現している企業の特徴と要因を把握することを目的としている。