令和元年度産業経済研究委託事業(諸外国等における課税の動向等及び日本企業の税務対応状況等に係る調査研究事業)

掲載日: 2021年4月20日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局企業行動課
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報告書概要

この報告は、諸外国における法人税制改革の動向と日本企業のタックスコンプライアンスコストに関する経済産業省委託調査について書かれた報告書である。本調査は平成27年度から始まった成長志向の法人税改革により法人実効税率20%台を実現した一方で、グローバル化に伴う各国の法人税率引下げ競争や米国の2017年抜本的税制改正、経済の電子化によるBEPS問題などの新たな課題に対応するため実施された。調査は諸外国の課税動向調査と日本企業の税務対応状況調査の2本立てで行われた。諸外国調査では、イタリア、ベルギー、米国、英国における法人税制改革を詳細に分析し、特にACE制度やキャッシュフロー課税といった抜本的改革の効果を検証した。イタリアではみなし利息控除制度が企業の資本構成改善に寄与し、ベルギーでも同様の制度が負債依存の軽減に効果を示した。米国では2017年の大規模税制改正により法人税率を21%に引下げテリトリアル課税に転換したが、投資効果は限定的であった。英国では段階的な税率引下げと課税ベース拡大により競争力強化を図った。日本企業調査では、アンケート分析により税務手続きに係る負担状況を把握し、タックスコンプライアンスコストが企業規模や業種により大きく異なることが判明した。推計では日本企業全体のタックスコンプライアンスコストはGDP比0.02から0.04%とされたが、実際はこれより大きい可能性が示唆された。本調査により、各国が法人税率引下げと課税ベース拡大を同時に進める中で、新たな課税方式の導入や国際協調の重要性が明らかとなり、日本における今後の望ましい税制のあり方について重要な示唆が得られた。