令和元年度安全保障貿易管理対策事業(対内直接投資規制対策事業(諸外国における投資環境動向調査))報告書

掲載日: 2021年4月22日
委託元: 経済産業省
担当課室: 貿易経済協力局貿易管理部 安全保障貿易管理政策課国際投資管理室
委託事業者: ホワイト&ケースLLP
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令和元年度安全保障貿易管理対策事業(対内直接投資規制対策事業(諸外国における投資環境動向調査))報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、令和元年度安全保障貿易管理対策事業として実施された、諸外国における対内直接投資規制制度の動向調査について書かれた報告書である。調査対象国は米国、英国、ドイツ、フランス、欧州連合、中国であり、各国が国の安全や公の秩序維持の観点から導入している資本移動規制の制度や運用実態を詳細に分析している。

米国においては、2018年外国投資リスク審査現代化法により対米外国投資委員会の権限が大幅に拡大され、従来の支配権取得を伴う取引に加えて、重要技術、重要インフラ、機微個人情報に関与する事業への非支配的投資や不動産取引も審査対象となった。特に重要技術分野では米国軍需リストや通商管理リストに掲げる製品・サービス、先端基礎技術が対象とされ、外国政府の相当な権益が関与する取引については届出が義務化されている。

英国では企業法に基づく外資規制制度が運用されており、公益に反する取引を阻止する権限を政府が有している。審査対象は軍事・デュアルユース技術、量子技術、先端材料、衛星・宇宙技術等の敏感分野における投資であり、EU対内直接投資指令の影響も受けている。ドイツでは対外経済法により、EU域外投資家によるドイツ企業の買収について政府による審査が行われ、特に重要技術や軍事関連分野での規制が強化されている。

フランスは通貨金融法典により戦略分野への外国投資を規制しており、防衛、エネルギー、水資源、電子通信等の分野で事前承認制を採用している。欧州連合レベルでは2019年に対内直接投資審査規則が施行され、加盟国間での情報共有と協力体制が構築されている。中国では国家安全法や反独占法等により外資規制が実施され、国家安全に影響を与える可能性のある投資について審査が行われている。

各国とも国際的な投資ルールに適合しつつ、自国の安全保障や重要インフラの保護を目的とした規制制度を整備している。技術の軍事転用や技術流出への懸念、政府系ファンドの台頭等を背景として、従来の規制制度の見直しや強化が進められており、我が国の資本移動規制のあり方検討に重要な示唆を与えている。