令和元年度戦略的基盤技術高度化・連携支援事業 (新規事業創出の促進に向けた大企業人材の流動化に係る調査)
報告書概要
この報告は、大企業人材のスタートアップ出向や出向起業による新規事業創出の促進について書かれた報告書である。日本では人材やリソースが大企業に集中しているが、既存事業対応に終始する大企業内では新規事業創造に必要な創造性を体得できないという課題がある。経済産業省は大企業人材の流動化を促進し、スタートアップへの出向や派遣を通じた実践的教育や起業支援を検討している。本調査では文献調査とヒアリング調査を実施し、大企業、仲介会社、スタートアップ、有識者等を対象として現状や阻害要因を分析した。調査結果から、大企業側では出向起業の認知不足、適切な人材の判別困難、社内制度の未整備、出向者の離職懸念などが障壁として明らかになった。一方、起業意欲のある大企業社員側では制度対応の不備、所属組織の理解不足、復帰後の処遇不安などが課題となっている。スタートアップ企業側では契約条件の不透明性、出向者の役割不明確、受入効果の不明瞭さが阻害要因である。労務管理については出向元企業とスタートアップ企業が業務計画を策定し、週次報告による管理体制を構築する事例がある。知財管理では開発成果物の帰属について事前協議が重要であり、貢献度に応じた知財配分の検討も必要である。出向後の課題として、出向者の離職防止や組織復帰時の適切な配置が挙げられる。出向期間中の継続的コミュニケーションと復帰後の期待感醸成、多様性を受け入れる組織体制の構築が対策として重要である。
