令和元年度中小企業の海外展開事業収益化促進政策の検討に関する調査事業報告書

掲載日: 2021年4月22日
委託元: 経済産業省
担当課室: 中小企業庁経営支援部創業・新事業促進課海外展開支援室
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報告書概要

この報告は、令和元年度における中小企業の海外展開事業収益化促進政策の検討に関する調査事業について書かれた報告書である。

日本経済が持続的に発展するためには、働き手の減少や少子高齢化が進む中で、中小企業が新興国を中心とした開発途上国の新市場を取り込む必要がある。本調査は、中小企業が海外展開時や展開後に直面する課題の解決および現地化や事業拡大において、行政に求められる支援施策を調査・分析し、政策提言することを目的として実施された。

現在、各政府機関や関連組織は中小企業向けに114件の海外展開支援施策を提供しており、これらは海外展開前と展開時・展開後の2段階に分類され、情報収集から人材育成まで幅広く網羅されている。東京商工会議所や日本商工会議所などの機関では、よろず相談から経営指導、特定原産地証明書発給まで多様な支援を行っている。しかし、支援機関への調査では、情報提供は充実している一方で、具体的な行動につなげるハンズオン支援や企業目線での助言が不足していることが明らかになった。

海外展開を実施中の中小企業からは、進出先国での認証や免許取得、良質な代理店や販売パートナーの発掘、政府機関との折衝などにおいて具体的な支援を求める声が多く寄せられた。また、事業化に向けた資金支援として、実証調査後の本格的な事業立ち上げまでの継続的な資金援助や、他業種との連携による海外展開、官民連携ファンドの強化が必要とされている。さらに、海外事業を担う人材確保の困難さから、技能実習生の循環型活用や国内シニア層との マッチング支援が課題として浮上している。

米国政府の海外展開支援施策の調査では、輸出者向けの包括的な情報提供システムや貿易金融ガイド、国別商業ガイドなどの充実した支援体制が確認された。これらの分析を踏まえ、本報告書では三つの政策提言を行っている。第一に、情報提供を超えたハンズオン支援として輸出手続きや現地許認可申請、マッチング支援、政府交渉支援を有料サービスとして実施することを提案している。第二に、事業化に向けた資金支援として他業種連携海外展開支援や官民連携ファンドの強化を求めている。第三に、外国人材と国内人材の効果的な活用による海外事業人員確保支援の実施を提言している。これらの施策実施にあたっては、支援対象の明確化と実施の柔軟性確保が重要な留意点とされている。