令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(キャッシュレスを起点とする金流・商流・物流のデータ利活用に係わる調査事業)報告書キャッシュレスビジョン外伝キャッシュレスから始めるデータ利活用~地域と中小企業編~
報告書概要
この報告は、キャッシュレス決済から得られるデータの利活用による地域活性化と中小企業の競争力強化について書かれた報告書である。
経済産業省は、2025年までにキャッシュレス決済比率4割達成を目指す中で、決済データだけでなく商流・物流情報のデジタル化によって得られるデータを産業競争力強化に活用する方策を検討した。有識者と業界団体による検討会を設置し、地域と中小企業におけるデータ利活用の実践事例を分析している。
地域の事例では、広島県東城町の「ほろかカード」が高齢化が進む地域で住民の5割以上に普及し、50%のキャッシュレス化率を達成した。愛媛県松山市の「まちペイ」は観光都市の特性を活かし、地域回遊性向上による活性化を実現している。これらの取り組みでは、商工会や地域企業が主導し、地道な巻き込み活動によって店舗参加を促進した。
中小企業の事例では、小売業のグッデイが顧客データ分析により売上向上を達成し、ワクフリが農業分野でのデータ活用により新たなビジネスモデルを構築した。また、プラネット・テーブルが食材流通における情報の透明性向上を図り、セールスフォースがクラウドサービスを通じて中小企業のデジタル化を支援している。
国内外のデータ利活用動向調査では、決済事業者がJCB消費NOWやCustellaなどの統計サービスを提供し、PayPayが実店舗とネット販売の両方のデータを活用している。金融業ではJ.Scoreが信用情報の点数化を実現し、小売業ではパルコやダイエーが来店客分析や栄養管理サービスを展開している。
今後のデータ利活用促進に向けて、地域では商工会等の既存組織の活用と継続可能な運営体制の構築が重要であり、中小企業では段階的なデジタル化推進と外部サービスの効果的活用が必要とされる。
