平成31年度安全保障貿易管理対策事業委託事業(中小企業アウトリーチ事業(営業秘密漏えい対策))中国における営業秘密管理マニュアル
報告書概要
この報告は、中国における営業秘密管理について書かれた報告書である。中国では人材流動性の高さや知的財産権保護に対する社会的意識の不十分さを背景として営業秘密の漏えいが多発しており、日系企業においても被害が発生している状況である。
中国の反不正当競争法における営業秘密の定義は、日本の不正競争防止法と類似しており、非公知性、商業的価値、秘密保護措置の三要件を満たす必要がある。営業秘密侵害行為については、窃盗や詐欺などの不正手段による取得、秘密保持義務違反による開示、教唆や幇助行為などが規定されている。
実際の侵害パターンは従業員漏えい型、取引先漏えい型、第三者不正取得型の三つに分類され、特に従業員漏えい型が最も多いとされている。従業員漏えい型はさらに在職中の漏洩、退職後の転職先への漏洩、従業員による競合会社設立と流用に細分化される。営業秘密侵害に対しては民事的救済、行政処罰、刑事制裁の三つの法的措置が用意されている。
実践的な管理体制構築においては、現状確認から始まり、営業秘密情報の洗い出しと重要度区分、管理体制の整備というステップを踏む必要がある。具体的には担当部門の設置、従業員管理、執務室管理、生産現場管理、取引先管理などの対策が重要である。漏えい発生時には初動対応、民事訴訟、行政摘発、刑事摘発などの対応策が検討される。報告書には就業規則や秘密保持契約書、競業避止契約書などの参考書式も含まれており、日系企業の中国における営業秘密管理体制の整備に向けた包括的な指針を提供している。
