令和元年度国際エネルギー情勢調査(エネルギー情勢の変化に対する我が国及びアジア地域における石油備蓄の実効性分析)報告書
報告書概要
この報告は、エネルギー情勢の変化に対する我が国及びアジア地域における石油備蓄の実効性について書かれた報告書である。世界の一次エネルギー消費量は経済成長と人口増加により2017年から2050年にかけて1.3倍に増加すると予測され、特にアジア地域が世界のエネルギー消費増に大きく貢献する。アジアの世界シェアは2017年の41%から2050年には46%まで上昇し、中国の成長は鈍化する一方でインドとASEANが急速に拡大する。石油消費においても、世界全体の消費に占める新興・途上国の割合は2017年の49%から2050年には64%まで拡大し、アジアへの集中度は4割を超える。中国、インド、ASEANは国内消費の増加に対応するため輸入を増やし、自給率は大幅に低下する。原油供給では非OPEC諸国、特に米国のシェールオイルが2030年まで大幅に増産され、その後はOPEC諸国が供給増加の中心となる。中東地域からの供給途絶リスクの分析では、途絶期間や規模に応じて国際石油市場に深刻な影響を与えることが示された。米国の純輸出国化やアソシエーション国のIEA加盟による影響も検討され、世界の石油安全保障体制に変化をもたらす可能性が指摘された。日本への提言として、余剰備蓄能力を活用したチケット備蓄制度によりアジア新興国の石油安全保障に貢献し、石油安全保障コストの適切な分担と日本の備蓄コストの合理化を図ることが提案された。
