平成31年度安全保障貿易管理対策事業(対内直接投資規制対策事業(外国投資ファンド等の動向調査))に関する報告書
報告書概要
この報告は、平成31年度安全保障貿易管理対策事業における外国投資ファンド等の動向調査について書かれた報告書である。
先進諸国では国際的な投資ルール「OECD資本移動自由化コード」に適合する形で、国の安全や公の秩序維持の観点から資本移動規制を導入しており、我が国でも外国為替及び外国貿易法に基づく対内直接投資規制を実施している。一方で、我が国は日本再興戦略において2020年までに対内直接投資残高を35兆円まで倍増させる目標を掲げ、外国投資ファンドや外国政府系ファンドからの投資増加が見込まれる状況である。
調査対象として、世界における資産残高上位20ファンド、日本における資産残高上位20ファンド、今後投資活動の活発化が予想されるファンド等、世界における買収等の投資事例が含まれている。世界の資産残高上位には、ブラックロック、バンガード・グループ、ステートストリート・グローバル・アドバイザーズなどの米国系大手運用会社が上位を占めており、総資産は1兆ドルから3兆ドル規模に達している。日本における投資額上位では、同様に米国系運用会社が中心となり、150兆円以上の日本株投資を行うファンドも存在する。
今後投資活動の活発化が予想されるファンドには、アクティビスト的な手法を用いるファンドや政府系ファンドが含まれ、これらは企業の経営改革や事業再編を促す投資活動を展開している。具体的事例として、サード・ポイントによるユナイテッド・テクノロジーズの3社分割提案、トライアン・ファンド・マネジメントによるファーガソンの英国事業撤退提案、スターボード・バリューによるAECOMの事業売却提案などが挙げられている。これらの事例では、ファンドが企業に対して事業再編や上場地変更などの戦略的変更を求め、実際に企業側がそれらの提案を受け入れる結果となっている。
