令和元年度国際エネルギー情勢調査エネルギー転換に関する日独変革評議会およびエネルギーイノベーション政策に関する日英評議会(仮称)に係る事業調査報告書
報告書概要
この報告は、日本とドイツおよび日本とイギリス間でのエネルギー転換に関する国際協力について書かれた報告書である。
第一部では、2019年度に実施された日独エネルギー転換評議会の活動が詳述されている。同評議会は2016年に設置され、両国のエネルギー専門家が再生可能エネルギーや省エネルギー等の共通政策課題について議論を重ねてきた。過去3年間の研究では、両国の長期エネルギーシナリオや省エネ・電力市場政策を比較分析し、相違の要因を明らかにするとともに協力可能性を追求した。この成果として、再生可能エネルギーのコスト低減や系統統合、建物の省エネルギー促進など15の政策提言が策定された。
評議会では6つの重要分野が研究対象となった。デジタル化とエネルギー転換では、VPPやEMSなどの技術実装が検討された。水素社会では、出力変動する再生可能電力の平滑化や熱需要の低炭素化手段としての水素利用が議論された。長期シナリオとレビューメカニズムでは、目標達成に向けた適切な政策監視体制の構築が検討された。建物の省エネルギーでは、日独が持つ異なる強み(日本の省エネサービス・高効率技術、ドイツの外皮断熱・パッシブハウス技術)を相互活用する方策が議論された。運輸部門とセクターカップリングでは、電気自動車や燃料電池車を活用した分野横断的なエネルギー需給統合が検討された。再生可能エネルギーの系統統合コストでは、太陽光・風力発電の出力安定化に要する追加費用の定量化が議論された。
第二部では、日英エネルギーイノベーション評議会の活動が報告されている。同評議会では省エネルギー政策と洋上風力発電のイノベーション政策が主要議題となった。省エネルギー分野では、日本のトップランナー制度の効果分析が行われ、エアコンや冷蔵庫における目標達成状況が検証された。洋上風力発電では、イギリスの経験を基にコスト削減要因や政策がイノベーションに与える影響が分析された。両評議会の活動を通じて、エネルギー転換における二国間協力の有効性が実証され、今後の政策立案に資する知見が蓄積された。
