令和元年度経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業(小規模自治体をフィールドとした教育分野における行政保有データの利活用に関する調査研究)事業報告書

掲載日: 2021年7月15日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務情報政策局情報プロジェクト室
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令和元年度経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業(小規模自治体をフィールドとした教育分野における行政保有データの利活用に関する調査研究)事業報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、小規模自治体をフィールドとした教育分野における行政保有データ等の利活用に関する調査研究について書かれた報告書である。

Society5.0の実現を目指す現代において、デジタル技術やデータを活用できる人材育成が求められる中、小学校学習指導要領においても情報活用能力が学習の基盤となる資質・能力として位置付けられている。一方で、小規模自治体におけるオープンデータの取組率は24.3%に留まり、その理由として「効果・メリット・ニーズが不明確」「担当する人的リソースがない」といった課題が挙げられている。

本事業では、福岡県行橋市を実証フィールドとして選定し、小学生を対象とした防災をテーマとする探究学習プログラムを設計・開発した。行橋市は人口7.3万人の典型的な小規模自治体であり、タブレット配布率が全国平均を上回る1.5人に1台という優れたICT環境を有している。実証では、オープンデータを活用した学習用アプリケーションを開発し、地図情報やPOIデータを用いたワークショップを実施した。

実証結果として、参加児童の学習意欲が喚起されるなど一定の効果が確認された。作業部会からは防災教育に関するニーズが他の自治体からも多く寄せられていることが報告され、今回の取組が他自治体での活用も期待される試みであることが示された。しかし、より多くの児童の参加を促すためには学校や教育委員会との協力体制構築が必要であることや、学力向上に対するワークショップの有効性検証には更なる調査が必要であることなどの課題も明らかになった。

また、個別最適化された学びの提供に向けて全国学力・学習状況調査の利活用についても調査を実施した。先進的な取組を行う自治体・教育委員会へのヒアリング調査の結果、個別最適化された学びの実現のためにどのようなデータを活用すればよいか手探りの状態であることが判明した。教員からは業務負担を増すことなく多様な分析が可能なツールに対するニーズが確認されたが、全国学力・学習状況調査の結果データを年度をまたいだ時系列分析に用いるという教員ニーズは確認されなかった。

今後の展望として、防災以外のテーマでの取組推進により、より多くの自治体でオープンデータへの取組が推進されることが期待される。また、学習用アプリケーションの機能充実や教育現場で求められるセキュリティ機能の実装により、様々な地域での官民連携の取組推進が期待される。個別最適化された学びについては、単独の自治体では推進が困難であるため、国が中心となって推進することが求められるとしている。