平成31年度燃料安定供給対策に関する調査事業国際原油市場等を取り巻く環境や市場動向と価格形成に影響を与える諸要因に関する調査報告書
報告書概要
この報告は、国際原油市場を取り巻く環境や市場動向と価格形成に影響を与える諸要因について書かれた報告書である。令和2年2月に一般財団法人日本エネルギー経済研究所が作成した本調査は、米国を軸とした国際原油市場の環境分析を通じて、石油・天然ガス等の化石燃料安定供給に向けた日本の政策立案に資することを目的としている。報告書は四つの章から構成され、第1章では米国の制裁と石油供給・開発への影響を分析している。トランプ政権発足以降、イラン、ベネズエラ、ロシア、リビアに対する米国の経済制裁が産油国の石油生産量に大きな影響を与えており、特にイランでは制裁強化により石油生産量が4割減少し、ベネズエラでも2019年の生産量が前年比でほぼ半減したことが示されている。第2章では米国の各種政策とエネルギー関連事業について考察し、トランプ政権の経済・金融政策やエネルギー・環境政策を概観している。米国の石油・天然ガス産業は極めて多くのプレーヤーが存在する競争的な構造であり、短期的には増産ペースが鈍化しているものの、石油は2030年頃、天然ガスは2050年に至るまで純輸出量の増加が見込まれることが分析されている。第3章では石油・天然ガス主要生産国として、ロシア、カナダ、OPEC、カタールの供給・開発動向と国際情勢への影響を検討している。ロシアでは石油増産がほとんど見込まれず、米国制裁が開発投資や長期的な石油生産量に与える影響が懸念されている。カナダは石油・天然ガス輸出のほとんどを米国市場に依存しており、価格低迷やパイプラインプロジェクトの遅延の影響を最も受けている状況である。第4章では精製能力拡大と石油製品市場について分析し、日本の製油所競争力について論じている。中期的には精製能力が液体燃料需要を上回るペースで拡大することが見込まれており、石油製品価格や精製マージンには下方圧力がかかりやすい状況が続くと予測されている。日本の石油会社は国際競争力強化のため、原油コスト削減、製品の高付加価値化、稼働信頼性の向上、石化事業との連携強化等が必要とされ、政府による制度改善や資源外交を通じた支援の重要性が指摘されている。
