令和元年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(カンボジア王国・電力系統運用技術とサイバーセキュリティ技術に関する日本仕様の教育プログラム展開による我が国の電力制御システム等導入実施可能性調査事業)報告書(英語版)
報告書概要
この報告は、カンボジアにおける日本の電力制御システム導入のための教育プログラム実施可能性調査について書かれた報告書である。東京電力パワーグリッド株式会社が経済産業省のために実施した平成31年度調査として、カンボジアの電力系統運用技術とサイバーセキュリティ対策に関する日本の技術移転を通じた人材育成プログラムの導入可能性を検討している。
カンボジアは急速な経済成長により電力需要が過去15年間で12倍に増加し、年平均19%を超える成長率を示している。同国の電力政策は鉱物エネルギー省が所管し、2020年までに100%電化率達成を目標としているが、電力インフラの拡大に対して運用技術が追いついていない状況である。カンボジア電力公社の国家制御センターでは、設備事故や停電への対応能力が不十分であり、電力品質の低下と経済損失のリスクを抱えている。
調査内容として、電力公社の人材育成現状調査、国家制御センターの実際の運用状況調査、運用システムの現状調査、システム訓練シミュレータ設置に向けた環境調査、CO2排出削減効果の評価、日本企業の優位性確保などが実施された。教育プログラムは3段階の実施計画として、第1段階で訓練体制構築支援、第2段階で訓練体制拡充、第3段階で監視制御システム等の日本インフラ輸出実現を目指している。
プロジェクトの効果として、停電時間短縮による経済損失削減では2019年4月から9月の送電系統事故58件の分析から、情報収集・分析技術向上により復旧対応時間を20%短縮できると想定している。CO2排出削減効果については、系統運用能力向上により送電効率改善と高効率発電所の発電阻害削減により年平均35.6万トンのCO2削減が可能と試算している。日本にとっては、電力系統運用技術とサイバーセキュリティ対策の優位性認識により、将来のハードウェアインフラ導入において日本仕様の採用を促進し、インフラ輸出につなげることが期待される。