令和元年度産業経済研究委託事業経済産業政策・第四次産業革命関係調査事業費(日本の創造性向上に係る調査研究)報告書
報告書概要
この報告は、第四次産業革命下における日本の創造性向上について書かれた報告書である。
AIの社会実装進展により労働市場の構造が大きく変化し、高スキル職や低スキル職で就業者が増加する一方、中スキル職が大幅に減少する両極化現象が観察されている。このような状況下で、より創造性が必要な職種への労働移転や創造性を持つ労働力の供給が求められている。また、日本の労働生産性はG7中最高の伸び率を示すものの、絶対値では米国の65%という低い水準にあり、マークアップ率も1.0近辺で安定している一方、欧米諸国では1.2~1.6倍まで上昇している状況がある。
本調査では創造性とイノベーションの関係を明確に区分し、創造性を主にアイデアを創造することとし、イノベーションを創造したアイデアを商品化し市場で成果を出すこととして位置付けている。先行研究によると、創造性は個人の特性と個人を取り巻く環境や風土が関係しており、Amabileの構成モデルでは、組織の創造性に影響する要素として個人の創造性と職場環境に分け、個人の創造性は専門能力、創造的思考能力、モチベーションの3つの要素で構成されるとしている。
職場環境については、創造性を促進する6つの要因と阻害する2つの要因が特定されており、組織的奨励、上司による奨励、仕事グループからの支援などがプラス要因として、組織的障害や仕事負荷の重圧がマイナス要因として挙げられている。これらの知見を踏まえ、第四次産業革命下における労働移転や生産性向上による成長戦略の構築に向けた創造性向上の方向性が検討されている。
