令和5年度産業経済研究委託事業(スタートアップの人材確保にかかる調査研究)調査報告書

掲載日: 2024年1月12日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局産業創造課
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報告書概要

この報告は、スタートアップ企業の人材確保におけるストックオプション制度について書かれた報告書である。日本のスタートアップ企業は事業拡大のため多額の資金投入が必要となり、役職員に対して十分な給与水準を提供することは困難である。そのため、将来的な成長による金銭的リターンを役職員に提供できるストックオプションは、優秀な人材確保のインセンティブスキームとして幅広く活用されている。しかし、現在の日本におけるストックオプション制度には改善の余地があると指摘されている。

本調査では、スタートアップ企業83社および従業員98名を対象としたアンケートを実施し、ストックオプション制度の実態を調査した。また、M&A案件におけるストックオプション処理例についても調査を行った。さらに米国、英国、フランス、オーストラリアの4か国について、ストックオプション制度および関連する税制優遇の概要を調査した。

調査結果によると、経営陣クラスの候補者は自らストックオプション制度を調べ、上場時のリターンを試算するなど積極的であり、採用に効果的である。一方で、一般従業員については、ストックオプションの意味や行使条件に対する理解不足により、予想しない形で反発が生まれることもあり、付与のバランスが難しい状況にある。従業員の理解不足によってストックオプションが現実的なインセンティブとして魅力的に映っておらず、収益が安定するまでに時間を要する事業では強いインセンティブとして機能していない実態が明らかになった。

米国では、スタートアップ企業の成長段階に応じて異なるエクイティインセンティブが採用されている。初期段階ではRestricted Sharesの利用が多く、成長に伴いストックオプション、さらなる成長でRestricted Share Unitsが採用される。10万ドルの上限規制については、制定当初より価値が下がっているため調整が必要との指摘もあるが、法律改正には連邦議会の承認が必要であり長年変更されていない。本調査を通じて、今後のストックオプション制度改善に向けた基礎的データと課題が整理された。