令和5年度中小企業政策推進事業(中部地域における事業承継・引継ぎに関する課題及び取組調査)調査報告書(公表用)
報告書概要
この報告は、中部地域における事業承継・引継ぎに関する課題及び取組について書かれた調査報告書である。令和5年度に経済産業省中部経済産業局が株式会社百五総合研究所に委託して実施された調査であり、愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県の5県を対象として、中小企業の事業承継の実態を把握し、より効果的な支援策の検討を目的としている。
調査は、60歳以上の経営者を持つ中小企業4,004件、過去に事業承継を行った三重県の企業664件、支援機関328件へのアンケート調査と、企業10者と支援機関6機関へのヒアリング調査により実施された。調査の結果、三重県の後継者不在率が全国で最も低いという特徴が明らかになり、その要因として4つの重要な点が特定された。
第一に、三重県の企業は愛知・大阪の2大都市に挟まれた恵まれた立地により比較的良好な経営環境にあり、経営者と後継者が自社の強みや取引先ネットワークを適切に把握できていることが挙げられる。第二に、経営者が若い年齢で事業承継を希望する傾向があり、数年前から準備を開始するなど、早期の取組開始により十分な検討時間を確保していることが判明した。第三に、実子への承継にこだわらず、その他親族や従業員など多様な選択肢を検討し、事業承継の可能性を広げていることが確認された。第四に、支援機関による充実した支援策の提供があり、信頼度の高い担当者からの働きかけや税法改正などの関心を引く話題を活用した相談しやすい環境作りが効果的に機能していることが明らかになった。
支援機関の取組では、企業の事業性評価と強みの把握支援、個別企業の課題に応じた働きかけの実施、他社事例の共有や経営者同士の情報交流の場の提供が重要であることが示された。一方で、支援機関同士の連携については、民間コンサルティング会社や税理士法人との連携は積極的に行われているものの、事業承継・引継ぎセンターとの連携が限定的であるという課題も浮き彫りになった。
