令和5年度産業経済研究委託事業(諸外国の規制料金制度とその解除基準に関する調査事業)調査報告書

掲載日: 2024年5月17日
委託元: 経済産業省
担当課室: 電力・ガス取引監視等委員会事務局取引制度企画室
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報告書概要

この報告は、諸外国の規制料金制度とその解除基準について書かれた報告書である。英国、イタリア、フランス、スペイン、ドイツ、アイルランド、米国の3州における電力小売市場の規制料金制度の実態を詳細に調査分析している。英国、イタリア、フランス、スペインでは規制料金制度を導入している一方で、ドイツやアイルランドでは時限的に規制料金制度を導入し既に解除済である。昨今のエネルギー危機により、小売料金の高騰、小売電気事業者の撤退と市場集中度の高まりが欧州各国共通の課題となっている。英国では小売電気事業者の撤退が相次ぎ事業者数が約半数に減少し、約500社の小売電気事業者が存在するイタリアでも上位3社の合計市場シェアは約50%を占める状況である。各国の規制料金は市場・燃料価格の変動を需要家に転嫁可能であるが、エネルギー危機等に起因する価格高騰を抑制・補填するための措置も合わせて講じられている。英国では規制料金解除の定量的な判断基準として構造変化、競争プロセス、公正な成果の3つの観点から市場の競争環境を評価している。また英国では規制料金解除後に標準変動料金を選択している需要家が余分に電気料金を支払っていたため、プライスキャップという形で規制料金が再導入された。イタリア、スペインでは小売電気事業者の倒産・撤退による供給停止のリスクがある需要家以外に経済的に脆弱な需要家も最終保障供給の対象としている。日本の制度設計への示唆として、規制料金解除後の最終保障供給の担い手として送配電事業者の責任や業務範囲が無制限に拡大しないよう小売電気事業者への役割委託などの対応が考えられる。また大手小売電気事業者による市場濫用行為を防ぐアプローチとして規制料金の解除基準の精緻化や小売料金下限の設定が提案されている。