令和5年度標準活用加速化支援事業(航空機・装備品の環境新技術に関する国際標準化活動における優位性分析)報告書
報告書概要
この報告は、航空機・装備品の環境新技術に関する国際標準化活動における優位性分析について書かれた報告書である。ICAO(国際民間航空機関)が2050年までのカーボンニュートラル目標を採択したことを受け、航空分野における脱炭素化への機運が高まっている状況において、日本企業が次世代航空機の技術に関連するルール形成で主導的な立場を確保することを目的として調査が実施された。
調査は4つのタスクで構成されている。Task1では航空機・装備品の環境新技術に係る知的財産情報の分析を行い、水素化、電動化、軽量化・効率化の各分野における特許出願状況と技術開発動向を分析した。その結果、水素化では欧米のOEMとスタートアップが研究開発を推進し、電動化では推進系モーターやハイブリッド推進システムの開発が進んでいることが判明した。軽量化・効率化分野では既に機体への活用が進む中で、エンジン等の高温部や小型機体への活用技術開発が進んでいる。日本企業の優位性については、電動化分野のリチウムイオン電池、軽量化分野のCFRPとCFRTPで確認された。
Task2では航空機・装備品の安全基準・国際標準における環境新技術の導入による影響分析を実施し、現在安全基準が明確に制定されているのは電動化技術を活用したジェネレータのみであり、ハイブリッド推進システム、リチウムイオンバッテリー、電動推進用モータについては暫定的な特別条件が制定されていることが明らかになった。Task3では航空機・装備品の環境新技術に係る海外での試験設備・インフラ等の整備状況を調査し、欧米を中心として電動化・水素化に関する試験設備の導入が進んでいることを確認した。
Task4では国内外における航空機・装備品の環境新技術に係る標準化・技術開発動向を調査し、各標準化団体のコミッティにおけるキーパーソンを特定するとともに連携可能性を検討した。海外有識者からのヒアリングにより、日本企業の標準化活動における課題として、参加の少なさ、英語での議論の困難さ、他コミッティとの連携不足などが指摘された。これらの課題解決のため、参加ハードルに関する認知向上、研究開発力の向上、人的リソース確保、標準化組織・人材の育成といった優先課題が特定され、標準化団体との連携強化に向けた具体的な解決手段が提案されている。
