令和5年度我が国におけるデジタル取引環境整備事業(ブロックチェーンに係る技術調査)報告書
報告書概要
この報告は、令和5年度における我が国のデジタル取引環境整備事業に関して、ブロックチェーン技術の調査結果をまとめた報告書である。ブロックチェーンは、取引記録やデータを幅広い参加者が共有し、過半数の合意なく変更できないようにする技術として、デジタル取引環境において重要な役割を果たすと予測されている。本調査では、産業振興および競争力確保に向けたブロックチェーン活用のための政策立案に資する情報収集を実施した。調査方法として、先行調査の棚卸し、ユーザー側・プロバイダー側双方へのヒアリング、机上調査を組み合わせて進められた。
ブロックチェーンの導入により、業務効率化、コスト削減、収益機会創出、規制・コンプライアンス遵守が可能となり、日本の社会課題や産業課題の解決に寄与することが期待されている。各産業において将来的な産業構造変化と数千億円規模の経済的インパクトが見込まれ、事業環境を一変させる可能性がある。企業や業界が経済的インパクトを享受するためには、企画と実装の二段階のステップが必要である。
技術面では、ブロックチェーンの仕様がオープンソース化されながら、アプリケーション開発や運用に適した機能を揃えたサービスが市場化されている。これらのサービスは将来的にデジタルプラットフォームとなることが期待され、その市場規模はグローバルで約800億ドル規模と見込まれている。特に重要な技術領域として、セキュリティ・プライバシー、ブリッジ・インターオペラビリティ、ウォレットの三つが挙げられ、中でもセキュリティ・プライバシー分野では日本に強みがあると考えられている。
海外政府の政策動向では、各国がユーザー企業による利用促進、プロダクトの開発・事業化支援、技術開発促進、人材育成・獲得の公的支援を複合的に実施していることが確認された。
