令和5年度産業経済研究委託事業(スタートアップの成長のための調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、スタートアップの成長のための調査について書かれた報告書である。経済産業省が実施した令和5年度産業経済研究委託事業として、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社が調査を実施し、2024年3月に公表された。
本調査の背景として、スタートアップ育成5か年計画で掲げられたユニコーン企業100社創出という目標を達成するため、海外投資家やベンチャーキャピタルからの投資を促進し、グローバル市場への展開を図る必要性が指摘されている。海外投資家にとって日本の契約書式等が参入障壁となる場合があり、また日本のスタートアップはIPOを前提とした資本政策を作成しているため、M&Aを選択することが困難な状況となっている。さらに、スタートアップが大きく成長するためには海外市場への展開が必要であるが、そのためのハードルやプラクティスが明確でないという課題がある。
調査は3つの主要テーマから構成されている。第一に、スタートアップのM&A活用に関する調査では、エグジットとしてのM&Aの選択と成長機会として他社をM&Aする両方の活用について調査された。第二に、スタートアップのグローバル展開に関する調査では、海外展開における課題やポイントを調査し、政府によるアウトバウンド支援施策への示唆を提供している。第三に、投資環境に関する調査では、日本の投資環境と日米での投資契約の差分を分析し、日本の投資環境のグローバル化に向けた現状と今後の検討方向性を示している。
M&A活用については、IPO前の他社M&Aは適切な対応により実現可能であることが判明した。また、IPOとM&Aのデュアルトラック戦略により複数のエグジット選択肢を確保できることが示されている。投資環境については、日米間の投資契約に差異があり、特に株式買取請求権や表明保証の対象等について違いが認められ、これらの背景にはスタートアップのガバナンスレベルの違いがあることが指摘されている。調査結果を踏まえ、海外投資家からの資金調達を活用した大規模成長を実現する環境整備に向けた今後の検討方向性が提示されている。