令和5年度中小企業活性化・事業承継総合支援事業(中小M&Aの在り方に関する調査事業)
報告書概要
この報告は、中小企業庁が実施した令和5年度中小企業活性化・事業承継総合支援事業における中小M&Aの在り方に関する調査事業について書かれた報告書である。EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社が2024年3月29日付で作成したものであり、中小企業のM&Aに関する国際比較と国内におけるトラブル事例の分析を行っている。
調査概要として、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの4カ国における中小企業の定義と事業承継の特徴を比較分析している。各国の中小企業の定義は異なり、アメリカでは従業員数500人未満、イギリス、ドイツ、フランスではEU勧告を意識した定義が採用されている。事業承継のスキームやソリューションは公開市場と同じであるが、中小企業に特化した独自のマーケットが形成されていることが確認された。
アメリカでは中小企業が3,318万社存在し、全企業の99.9%を占めている。81.7%が非雇用企業であり、中小企業は新規雇用創出に大きく貢献している。1995年以降の新規雇用の純増数の62.7%を中小企業が占めており、起業・廃業数も多く企業の新陳代謝が活発である。業種別では専門・科学・技術サービス、建設業、その他サービス業の数が多い。
国内のトラブル事例調査では、アンケート調査と裁判例調査を実施している。アンケート調査では事業承継・引継ぎ支援センターや士業専門家等を対象とし、裁判例調査では昭和20年から令和5年までの判例データベースを検索して関連事例を抽出している。調査結果から、無理のあるスケジュールやプロセス、不完全な合意形成に起因するトラブル事例が広く発生していることが判明した。
M&A仲介・FA業者と企業間のトラブルとしては、過剰営業や誇大広告、案件の滞留・抱え込み、役務提供の適切性の問題が挙げられている。譲渡・譲受企業間のトラブルでは、譲渡対価の支払いや経営者保証の取扱いに関する問題が発生している。裁判例調査では、M&A仲介業者による報酬支払請求が多く、表明保証義務違反を理由とした損害賠償請求も見られる。これらの分析を通じて、役務提供の品質向上、取引の透明性・適切性の確保、公正な市場取引形成、支援体制強化の必要性が示されている。
