令和5年度エネルギー需給構造高度化基準認証推進事業費(ルール形成戦略に係る調査研究(次世代航空機へ搭載される部素材におけるルール形成戦略に係る調査研究))報告書
報告書概要
この報告は、次世代航空機へ搭載される部素材におけるルール形成戦略について書かれた報告書である。ICAOが2050年までのカーボンニュートラル目標を掲げたことを受け、次世代航空機には電動航空機や水素航空機といった革新的な脱炭素化技術の導入が求められており、これに伴い新たな部素材や技術の採用が見込まれている。
報告書では、まず国内外における標準化を活用した技術導入事例として、電動車両用蓄電池と水素技術の標準化状況を調査した。電気自動車用蓄電池についてはISOとIECを中心に標準化が進められ、国内では電池工業会、自動車技術会、日本自動車研究所が中心的役割を担っていることが明らかになった。水素技術についてはISOとSAEで標準化が進行中であり、陸上車用途が先行している一方、航空機向けは初期段階にあることが確認された。
航空機分野における新技術採用事例として、NASA-ACEEプログラムから始まったCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の適用過程を詳細に調査した。Boeing 737での水平尾翼、Boeing 777での垂直安定板等への適用、さらにBoeing 787での主翼・胴体への本格適用に至る経緯と、その過程でのFAA認証基準の変遷を分析した。また、Boeing 787のリチウムイオン電池に関する特別要件についても、発火インシデントを受けた規格改訂の迅速な対応事例として検討した。
国際標準化に向けた戦略検討では、SAE International、ASTM International、EUROCAE、RTCAなど主要な標準化団体の動向を調査し、電動航空機や水素航空機技術に関する標準化活動の現状を把握した。特にSAEでは電動化技術を対象としたステアリンググループEASGが設置され、新しい委員会E-40が立ち上がるなど、積極的な標準化推進が確認された。CFRPの標準化を担うCMH-17やNCAMPについては、FAA承認のもとでデータ収集・解析を行い、材料認定や設計許容値の確立を担っていることが明らかになった。
海外当局の基準策定状況として、FAAとEASAの民間航空機認証について調査を実施し、両機関の若干の差異はあるものの情報共有が行われていることを確認した。国内外の技術動向では、NEDOやSIPを中心とした国内プロジェクトの進捗と、欧米における脱炭素研究開発プロジェクトの状況を整理し、機体規模や運航距離に応じて適した動力源が異なることを示した。
