【公開用】令和5年度エネルギー需給構造高度化対策調査等事業多国間枠組における水素エネルギーに関する国際動向調査最終報告書
報告書概要
この報告は、令和5年度エネルギー需給構造高度化対策調査等事業として実施された、多国間枠組における水素エネルギーに関する国際動向調査について書かれた報告書である。国際的な水素エネルギー分野において活動する主要な多国間枠組みの役割と位置付けを明確化し、各組織の活動内容と成果を体系的に分析している。
報告書は、IPHE(国際水素・燃料電池パートナーシップ)、CEM水素イニシアチブ、Breakthrough Agendaという三つの主要な国際枠組みを取り上げ、それぞれの組織構造、参加国、具体的な活動内容を詳細に検討している。IPHEは24か国が参加する技術協力促進組織として、水素製造に伴う温室効果ガス排出量算定方法論の開発など標準化分野で重要な成果を上げている。CEM水素イニシアチブは商業展開を重視した取り組みを行い、グローバルサプライチェーン構築に焦点を当てている。Breakthrough Agendaは2030年までに再生可能エネルギー由来の安価な水素を広く利用可能にすることを目標としている。
さらに報告書は、各組織が発行した重要な文書や報告書の内容を分析している。IPHEの温室効果ガス排出算定方法論第3版、APECの低炭素水素国際基準に関する報告、ISGPの日本における水素エネルギー未来への提言、IEAの排出強度に基づく水素定義など、水素認証や標準化に関する国際的な議論の動向を包括的に整理している。これらの文書は、水素の炭素排出強度測定、認証制度設計、国際貿易促進のための共通基準策定という重要な課題に取り組んでいる。
最後に各国の水素戦略と政策動向についても詳細に分析している。ドイツは2023年に国家水素戦略を改訂し、2030年までの水電解プラント導入目標を倍増させた。オーストラリアはハイドロジェンヘッドスタートプログラムを通じて大規模水素プロジェクトへの収益支援を実施している。韓国は水素経済委員会を通じてクリーン水素認証制度を確立し、段階的な炭素強度基準を導入している。これらの国々は、それぞれ異なるアプローチながら、水素産業育成のための包括的な支援制度を構築しており、国際的な水素市場形成に向けた競争が激化している状況が明らかとなっている。
