【公開用】令和5年度エネルギー需給構造高度化対策調査等事業クリーン水素の評価・認証体制の検討に関する調査最終報告書
報告書概要
この報告は、日本が構築すべきクリーン水素認証制度の在り方について調査した報告書である。
水素は多様な分野のカーボンニュートラルに必要不可欠なエネルギーであり、世界各地で低炭素水素の定義づけや排出量評価に関する議論が活発化している。国内でも改訂版「水素基本戦略」においてクリーン水素の具体的な炭素集約度の閾値とともに推進することが示され、価格差支援や拠点整備支援等の大胆な支援が発表されている。
本調査は三つのパートで実施された。海外水素認証制度・水素評価算定手法等調査では、英国、欧州、フランス、米国、カナダ、豪州、ドイツ、韓国について調査を行った。その結果、現状では英国・豪州・韓国のみが国の制度設計レベルで具体的検討を行っており、その他の制度は認証制度ではなく財政的支援を行うものであることが判明した。水素の排出量計算のバウンダリはwell-to-gate、チェーン・オブ・カスティディはマスバランスが大半を占めている。
水素以外の類似制度調査では、J-クレジット、二国間クレジット、グリーン電力証書、非化石証書、ISCC、IECEE/CBスキームを調査した。これらの制度は法規への位置づけや国際協定での位置づけがなされており、公的な意味合いが強いものが大半であった。制度運用費用は国が負担し、第三者機関への審査費用は各事業者負担という整理が多かった。
国内水素認証制度ステークホルダーとの意見交換では、資源エネルギー庁、認証機関、認定機関にヒアリングを行った。水素認証制度の使用目的や官民保有の別、成立時期については今後検討が必要であることが判明した。一方で制度自体の必要性については確認され、価格差支援や拠点整備支援により製造された水素に対する適用の可能性も確認された。
これらの調査結果を踏まえ、国内水素認証制度のあるべき姿を整理した。制度は堅牢性、透明性、公平性、監視と正確性、親和性、将来性のある設計という基本原則に基づくべきである。特にダブルカウントの回避は重要であり、他の同様の認証制度への重複登録防止や水素の属性追跡を第三者機関が確認する必要がある。運用コストは年間数億円程度、設備・バッチ審査は50~100万円程度と想定される。
