令和5年度重要技術管理体制強化事業(産業競争力強化法に基づく技術情報管理認証制度に関する調査分析及び普及促進等事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、産業競争力強化法に基づく技術情報管理認証制度の基準改定と普及促進について書かれた調査報告書である。グローバル競争が激化する中、事業者の競争力の源泉である技術情報の適切な管理が重要性を増している一方で、特に中小事業者では知見や経験不足により情報管理体制の整備が十分に進んでいない現状がある。平成30年から開始された認証制度は、事業者が取り組むべき技術情報管理項目を示し第三者認証する制度として運用されているが、新型コロナウイルス流行によるテレワーク普及、雇用流動化、サイバー犯罪高度化等の事業環境変化により情報セキュリティの重要性がさらに高まっている。
本調査では、技術情報の漏えい防止に必要な措置に関する基準の改定案検討として、情報セキュリティ専門知識を持たない中小企業担当者でも理解でき、認証取得時の第三者審査で解釈の余地がない表現を目指した。基準改定案は最低限満たすべき事項を明示し、特定業種を前提とせず一般的表現を用いることとした。有識者ヒアリングでは、テレワーク普及やクラウド利用を前提とした基準設定、パスワード管理強化、人物セキュリティクリアランスの重要性、ISMS認証との連携可能性などが指摘された。新たな脅威として生成系AIによる情報捏造リスクや外資系企業リスクも挙げられた。
認証制度の普及活動として、業界団体との連携によるセミナー開催や普及資料作成を実施した。特に半導体関連や自動車産業といったサプライチェーンでの重要技術を扱う業界において制度活用のニーズが高いことが確認された。セミナー参加者からは情報管理の重要性について理解が深まったとの評価を得た。技術情報管理認証制度に係る検討会及び運用ワーキンググループを設置し、産業界や有識者、認証機関の意見を踏まえた制度改善の方向性について議論を重ねた。今後は基準改定案の具体化と制度のさらなる普及に向けた取組が期待される。
