令和5年度製造基盤技術実態等調査(石油化学産業のサプライチェーン確保に向けた世界需給等調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、石油化学産業のサプライチェーン確保に向けた世界需給等調査について書かれた報告書である。
我が国の石油化学産業は、エチレン等の基礎化学品を通じて川下産業の競争力の源泉となっているが、2022年のエチレン生産量は541万トンと1983年以来の低水準となっている。生産低迷の要因として、国内製造業の生産低下、物価高による需要減少、中国の政策影響や生産設備増設による輸出減・輸入増が挙げられる。また化学産業は年間約6000万トンのCO2を排出しており、エネルギー由来と原料由来の排出削減が求められている。
本調査では、国内の石油化学サプライチェーンに影響する因子を網羅し、今後の見通しを立てることを目的として、エチレンおよびプロピレンの需要に影響する主要1次誘導品の2023年から2026年の内需を推計した。調査対象は13の石油化学品と20の国・地域とし、2010年から2022年の実績データから人口とGDPを変数とする内需推計回帰式を作成し、将来の人口およびGDP推計値から各石油化学製品の内需を算出した。
エチレン誘導品としてポリエチレン、スチレンモノマー、エチレングリコール、ビニルクロライドの4品目、プロピレン誘導品としてポリプロピレン、アクリロニトリルの2品目を対象とし、各誘導品の内需から原単位を用いてエチレン換算需要およびプロピレン換算需要を算出した。主要誘導品以外の需要を補正するため、日本の実績データから補正値を設定し、主要国では0.215、その他の国では0.100の補正値をエチレンに適用し、プロピレンには主要国で0.527、その他で0.264の補正値を適用した。
さらに、化学品製造に関わる直近の動向として、水素製造設備投資、アンモニア製造設備投資、バイオ由来化学品動向、ケミカルリサイクル技術動向、EUの包装材リサイクル規則案、EUのプラスチック製品動向について調査した。これらの情報から、2023年以降のエチレンおよびプロピレンの生産設備能力と内需推計値の差異により、各国の生産能力の過不足を算出し、輸出入ポテンシャルを基にサプライチェーンの動向を考察している。
