令和5年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業アジア大のサイバーフィジカルエコシステム構築調査事業調査報告書

報告書概要

この報告は、日本とASEAN諸国の間でのサイバーフィジカルエコシステム構築について書かれた報告書である。近年の産業デジタル化とサプライチェーン混乱を背景として、データドリブンなバリューチェーンの構築が求められており、日本とASEANが従来の経済連携をサイバーフィジカルエコシステムへと発展させることで、新しい社会課題解決と付加価値創出を目指すものである。米国・中国・欧州などの各地域でプラットフォーマーの影響力拡大やデータ共有イニシアチブが進められる中、他地域のイニシアチブに組み込まれることによる地域経済競争力の棄損リスクを避けるため、日本・アジア視点に立ったデジタルアーキテクチャの戦略的構築が必要とされている。本調査では経済産業省の研究会やワーキンググループ、ERIAでの検討を踏まえ、日・ASEAN産業データ連携のデジタルアーキテクチャが準拠すべき標準・ルール整備とデータ連携ユースケースの事例創出に向けた取組を実施した。検討前提として、データ活用ユースケース、データ共有基盤・仕組み、データ活用・共有ルール、データ共有を支えるトラストから構成されるフレームワークを設定し、単一プラットフォームではなく複数基盤が相互連携する連邦モデルの構築を目指している。調査では11のデータ連携ユースケーステーマが確認され、サプライチェーン領域ではサプライチェーン構造可視化、環境・規制対応、物流DX、サーキュラーサプライチェーン、エンジニアリング領域では生産・製造高度化、設計高度化、EV・バッテリー、サービス領域ではアフターサービス、金融サービス、新サービス、モビリティが挙げられている。実現に向けてはデジタルインフラ・機能整備、ルール・トラスト策定、マーケティング・オペレーションの取組が必要であり、日本側ではOuranos Ecosystem、Data-EX、DFFT・越境データ移転などの取組と整合を図りながら、ASEAN側ではERIAのE-DISCやAMEICCとの連携を通じて共同推進することが提案されている。