令和5年度「流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(事前出荷案内情報のデータ連携による物流面での企業間の協調促進)」報告書
報告書概要
この報告は、事前出荷案内情報(ASN)のデータ連携による物流効率化について書かれた報告書である。日本では人口減少に伴う労働力不足により物流の需要と供給のバランスが崩れつつあることから、フィジカルインターネット・ロードマップに基づく取組みが求められている。フィジカルインターネットとは、デジタル技術を活用して物流資産を共有し、規格化された容器での共同輸配送を実現する次世代物流システムである。ASNは従来紙伝票で伝達していた納品商品情報を発荷主が着荷主へ事前に電子的に送信する仕組みであり、検品省力化による荷役時間や車両待機時間の削減が期待されている。現状では卸売業・小売業間では流通BMSを通じて普及しているものの、メーカー・卸売業間では紙伝票への依存が続いており活用が限定的である。本事業では物流EDIを通じたASNデータ連携環境を構築し、協調物流と検品省力化の実証実験を実施した。協調物流では実績データの分析とシミュレーションにより効率化効果を検証し、長距離配送と短・中距離配送それぞれで実証を行った。検品省力化の実証では、PALTAC RDC堺において実際の検品作業時間を測定し、賞味期限ありの商品では約2倍、賞味期限なしの商品でも1割程度の作業効率向上が確認された。今後の課題として、発荷主と着荷主間でのルール取り決め、物流品質レベルの確保、システム改修等が必要であり、伝票レスやバース予約システムとの連携も検討すべきである。