令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(複数事業者協働での製品在庫配置の最適化による輸配送効率向上並びに返品・廃棄削減事例の創出)調査報告書
報告書概要
この報告は、複数事業者が協働して製品在庫配置の最適化による輸配送効率向上および返品・廃棄削減を実現するための基盤構築事業について書かれた報告書である。
物流業界では労働力不足が深刻化し、2024年4月の働き方改革関連法施行によるトラックドライバーの時間外労働規制などにより、物流効率化が急務となっている。サプライチェーンでは製造業・配送業・販売事業者による多段階の意思決定が介在するため、需要予測の精度向上には限界があり、特に日配品では製造業の予測ミスマッチが緊急生産や緊急輸送を引き起こし、物流に大きな負荷をかけている。
本事業では、小売業の株式会社バローと製造業の中部フーズ株式会社が協力し、CPFR(需要予測と在庫補充のための協働事業)の枠組みを構築した。従来の経験と勘による発注から、AI技術を活用した需要予測モデルを構築し、発注業務の自動化を実現した。また、発注リードタイムの長期化により、工場の見込み生産から受注生産への転換を図った。
実証実験は2024年1月から3月にかけて、バローの31店舗で実施された。結果として、発注回数が75%減少し、緊急輸送が0回となった。店舗の発注作業時間は26.8%削減、工場の計画策定時間は19.3%削減され、売上は2.7%増加、利益は3.8%向上した。さらに、欠品は18.2%減少し、サプライチェーン全体での廃棄は17.3%削減された。このような企業間協業により、作業効率化、物流コスト削減、販売面および在庫面での改善が実現され、社会実装に向けては価値の定量化と複数社でのシェアルール構築が重要であることが示された。