令和5年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(現代のトレンドを踏まえた産業構造の変化及び DX 等のトレンドにおいて高付加価値を創出する産業群・ビジネスモデル等に関する調査 )成果報告書
報告書概要
この報告は、デジタル化の進展が産業構造に与える影響と日本企業・政府が取るべき対応について書かれた報告書である。
DXの進展により、最終消費者への提供価値は従来の「経済合理性」を超えて、生活の自由度向上、個別化された特別なサービス提供、革新的体験の実現といった新たな価値創出へと変化している。企業はバリューチェーンの中流における既存オペレーション改善から、上流と下流における新たな価値創造に注力するようになり、その結果として産業構造に5つのアーキタイプによる変化が生じている。
第一は産業の再定義であり、既存産業の枠組みを超えて伝統的産業の外側にある別産業を取り込み新産業を創出することである。第二はユーザー接点となる下流の重層化で、ユーザーニーズの精緻な理解に基づく下流での製品・サービスの拡大・細分化である。第三は中流での限界利益の極小化で、既存バリューチェーン内での徹底的効率化を意味する。第四は上流でのイノベーション加速で、下流で得られるユーザーデータを活用した上流での研究開発・イノベーションである。第五は上流チョークポイントとなる素材・技術確保の絶対化で、半導体など経済安全保障の観点から確保が必須となる資源の価値上昇である。
これらの変化を踏まえ、各企業が新たなバリュープールを獲得するには、データフローにおける「データ取得」「データ分析・AI解析」「ユーザー接点」の3つのレイヤーをいかに押さえるかが鍵となる。日本企業の戦い方として、新データの創造あるいは分散・非構造データの統合・構造化による上流イノベーション加速、下流から上流へのサイクルを生み出す下流重層化、従前の産業領域を飛び越えた産業再定義の3つの方向性が示されている。報告書では自動車、ヘルスケア、人材・リスキリング、小売、産業機械の5産業での具体的検証を通じて、このフレームワークの汎用性を確認している。
