令和5年度産業保安等技術基準策定調査研究等事業(電力設備電磁界情報調査提供事業)報告書
報告書概要
この報告は、令和5年度に実施された電力設備電磁界情報調査提供事業について書かれた報告書である。本事業は、商用周波電磁界に関する国内外の研究動向と規制動向を広く国民に提供し、電磁界の健康影響に対する国と国民との間のリスク認知ギャップを解消することを目的としている。
世界最大の電磁界データベースであるEMF-PORTALを用いて、2023年に発表された商用周波電磁界に関する143件の文献から、生体影響に関わらないものや会議予稿集等を除外した53件について内容を整理した。その中で比較的重要度が高い研究として、イタリアで実施された高圧電力線からの磁界ばく露と小児白血病のリスクに関する症例対照研究があったが、統計的に有意なリスク上昇は認められなかった。また、欧州委員会の科学諮問機関SCHEERが電磁界ばく露の潜在的健康影響について予備的意見書を公表し、小児白血病との関連について弱い証拠があるとの見解を示した。
国内外の商用周波電磁界に対する規制動向についても調査を実施し、一般公衆および職業者向けの規制状況をとりまとめた。電磁界の健康影響に関する講演会は、経済産業省と総務省が共同で全国6箇所において開催した。大磯町、那覇市、札幌市、松本市、大阪市、高松市で実施され、大磯町以外はハイブリッド形式で開催された。講演内容は電力設備から発生する商用周波電磁界だけでなく携帯電話等の電波も含め、総務省と経済産業省のそれぞれの取組み、電波ばく露レベルのモニタリング、磁界測定結果、健康リスク評価等5つのテーマで構成された。参加申込数は合計1,341名、参加実績数は972名となり、効果的な開催周知により多くの参加者を得ることができた。
パンフレット「電磁界と健康」改訂第21版では、前年度版以降に大きなトピックがなかったため、国際がん研究機関による発がんハザード分類数の更新やウェブページURLの更新、身のまわりの磁界の強さに関するグラフへの地中送電線測定データ追加等の軽微な情報更新を行った。改訂されたパンフレットは全講演会場で参加者に配布され、同時に経済産業省ホームページ「電磁界と健康」の改訂データも作成し、国民が最新かつ正確な電磁界情報を入手できるよう整備された。
