令和5年度化学物質規制対策(化学物質管理の信頼性確保のための調査)調査報告書

掲載日: 2024年8月24日
委託元: 経済産業省
担当課室: 製造産業局化学物質管理課化学物質安全室
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報告書概要

この報告は、化学物質GLP制度の信頼性確保に関する調査について書かれた報告書である。OECD諸国間でのMAD(データの相互受理)制度の実効性を担保するため、2023年10月に実施されたOEV(現地評価査察)への対応を中心とした取り組みがまとめられている。

報告書では、まず国内外のOEV評価事例を調査し、現地評価における指摘事項の傾向を把握することで対策立案に資する情報を収集した。OECD第37回GLP作業部会で承認された7つの評価事例について、OECD国際評価チームのコメントがOECD GLP文書のどの部分に基づくものかを調査し、経済産業省所掌の監視当局運用文書との関係性を確認した。

OECD国際評価チームへの提出資料として、アンケート、現地評価レポートテンプレート、運用文書の英訳、化学物質GLP制度説明資料の作成を行った。特に運用文書については、前回OEV実施後の2012年以降に改訂された内容について、OECD GLP文書との整合性を確認しながら英訳作業を実施した。また、OEV同行通訳スタッフ用の和英対訳表を準備し、専門用語の統一を図った。

2023年10月2日から6日までの5日間にわたり実施されたOEVでは、Opening Meeting、執務室視察、GLP試験施設への現地査察、Closing Meetingが行われた。各会議の議事録作成、査察結果報告書の英訳、OECD国際評価チームからのコメントへの対応を実施した。特に重要な点として、OECD GLP文書No.22「GLP データインテグリティに関するアドバイザリー文書」に関するコメントを受領し、データ移行および検証済みコピーに係る確認について詳細な検討を行った。

データインテグリティについては、データが完全で一貫性があり正確で信頼できるものであり、データライフサイクルを通じてこれらの特性が維持されることを指している。特に動的データから検証済みコピーを作成する際には、監査証跡を含むメタデータの維持が重要であり、移行プロセスでデータの完全性が保証されることが求められている。化学分析における電子的クロマトグラムの取り扱いなど、具体的な場面での注意点についても言及されている。

日本の化学物質GLPは国際的に複雑な運用体制を持ち、監視当局間の同一性確保という独特の課題を抱えている。前回OEVから様式統一などの同一性確保が進められてきたが、近年のOECD GLP文書の改正動向を踏まえ、継続的な検討と必要に応じた見直しが必要である。国際的な信頼をより一層得るため、さらなる信頼性向上に向けた取り組みを進めていくことが重要であると結論付けられている。