令和5年度中小企業における金融支援策の政策効果検証事業調査報告書

掲載日: 2024年9月10日
委託元: 経済産業省
担当課室: 中小企業庁事業環境部金融課
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報告書概要

この報告は、新型コロナウイルス感染症対策として実施された中小企業向け実質無利子・無担保融資(コロナ融資)の政策効果について定量的に検証した報告書である。

本事業は、一般社団法人CRD協会が保有する中小企業決算データベースを活用し、政府系金融機関および全国信用保証協会からの融資情報を組み合わせて分析を実施した。経済学の専門家による研究会を設立し、2023年7月から2024年2月まで全6回開催して適切な分析手法を検討した。分析データは法人約300万件、決算書約2,600万件という大規模なものであり、2022年までの決算データを用いて検証が行われた。

分析結果から、コロナ融資は短期的に中小企業のデフォルトを抑制し、事業継続に有効であったことが確認された。特に小規模企業への効果が顕著であり、社会的混乱を未然に防ぐという政策目的に合致した結果が得られた。雇用維持についても、期末従業員数や人件費の維持・増加が確認され、雇用調整助成金等との組み合わせでより効果的であった。

一方で、コロナ融資を受けた企業のその後の業績回復については、売上高、営業利益、一人当たり付加価値額、信用力において相対的な減少・低下が見られた。ただし、観測できない企業属性やバイアスの影響を否定できないことに留意が必要である。財務状況では現預金比率が高水準を維持する一方、借入金依存度は2022年に企業間格差が拡大している状況が確認された。

今後の課題として、2023年以降のデータを用いた継続的な効果測定の必要性が指摘された。新型コロナウイルス感染症の5類移行後の本格的な回復状況を把握するため、より詳細なセグメント分析が求められる。また、コロナ融資の使途や融資条件による効果の違い、政府系と民間の融資効果の比較など、拡張的な分析設問への取り組みも必要である。さらに、適切な政策効果検証の実施に向けて、各機関におけるデータ提供体制の整備と、政策立案段階での効果測定に必要なデータの精査が重要であると提言されている。